東京高等裁判所 昭和57年(ネ)1638号 判決 1983年6月30日
控訴人(附帯被控訴人)
株式会社新潮社
代表者
佐藤亮一
控訴人(附帯被控訴人)
野平健一
右両名訴訟代理人
多賀健次郎
武田仁宏
被控訴人(附帯控訴人)
上原成信
被控訴人(附帯控訴人)
伊藤弘之
右両名訴訟代理人
中川明
中島通子
主文
一 本件控訴及び附帯控訴に基づき原判決を次のとおり変更する。
1 控訴人らは、被控訴人らに対し、別紙記載のとおりの謝罪広告を、表題の「謝罪文」とある部分並びに末尾の「株式会社新潮社」、「週刊新潮前編集発行人野平健一」とある部分及び「上原成信殿」、「伊藤弘之殿」とある部分はそれぞれ二倍活字とし、本文は一倍活字として、週刊誌「週刊新潮」誌上に縦八センチメートル、横14.5センチメートルの大きさで、一回掲載せよ。
2 控訴人らは、各自、被控訴人らに対し、各金一〇〇万円及びこれらに対する昭和五三年九月一二日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
3 被控訴人らのその余の請求を棄却する。
二 訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを一〇分し、その二を被控訴人らの、その余を控訴人らの各負担とする。
三 第一項2につき仮に執行することが出来る。
事実《省略》
理由
一当裁判所の判断は、左記のとおり、変更、附加、訂正するほか、原判決理由中と同一であるから、これを引用する。
1 原判決一三枚目裏八行目の「証人赤塚一」を「原審証人赤塚一」と訂正し、同行目の「同小菅瑛夫」の次に「当審証人山田孝弥」を附加する。
2 同二三枚目裏二行目の「ことは避けえないものと認めるのが相当である。」の次に「控訴人らは、当審において、右認定判断を非難し、本件記事の内容と読者層の学歴・経歴・社会的地位等に鑑み、これらの読者が本件記事を読んで、右認定判断のような印象を受ける筈はない旨述べるが、右は前記1(一)ないし(四)、2(一)(二)認定の本件記事を発表するに至る経緯や背景、本件記事が公にされた時期、本件記事の構成の仕方や叙述内容等に照らし、一般の読者が特段の偏見を交えることなくこれを読んだ場合被控訴人らに関し、どのような印象を抱くであろうかという評価の点につき、控訴人らは原審及び当裁判所のそれと異なる評価をおこなつているものであつて、当裁判所の採りえないところである。」を附加する。
3 同二三枚目裏六行目の「証人赤塚一」を「原審証人赤塚一」と訂正し、七行目の「同吉田正司」の次に「当審証人山田孝弥」を附加する。
4 同二四枚目表三行目の「十数年」を「十数年前」と訂正する。
5 同二五枚目表五行目「地位にあること」を「地位にあつたこと」と、同七行目の「当事者間に争いがない。」を「いうまでもない(右注意義務の存すること自体は、控訴人らも争わないところである。)。」と各訂正する。
6 同二八枚目表六行目の「七〇万円」を「一〇〇万円」と改める。
7 同二八枚目裏三行目の「三年以上」を「五年近い年数」と訂正し、同八行目の「認容されていること、」の次に「原本の存在と成立に争いない乙第四四、四五号証の各一、二によると、昭和五一年一月頃以降週刊新潮では、目次頁の下段は「代表質問」欄となつていること」を加え、同一〇行目の「別紙(一)」を「本判決添付別紙」と改める。
8 同二九枚目表一行目の「目次頁下段」を「誌上」と改め、同二行目の「週刊新潮」の次に「前」を挿入し、同六行目の「、一回掲載させれば足りるものと解される。」を「、一回掲載させることをもつて必要かつ充分であると解する。控訴人らは、当審準備書面の中で、かかる謝罪広告を認めることの不当性を強調し、他方、被控訴人らは、右の謝罪広告をもつては足りず、更に朝日新聞、毎日新聞、読売新聞に原判決別紙(二)の謝罪広告を掲載することを求めて附帯控訴をしているが、当裁判所は叙上のような本件記事による名誉毀損の程度、態様、被控訴人らの蒙つた被害の程度、範囲その他諸般の事情に照らし、本件については右に認めた謝罪広告をもつて必要かつ充分と判断するものであつて、これと異なる当事者双方の右主張、請求はいずれも失当として排斥する。」と訂正する。
二右のとおりであるから本件控訴及び附帯控訴に基づき、原判決を一部変更し、被控訴人の請求を一部認容、一部棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条、九三条を仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して主文のとおり判決する。
(田尾桃二 内田恒久 藤浦照生)
別紙
謝罪文
本誌昭和五三年六月一日号は、同年五月二〇日に発生した埼玉県所沢市の管制回線切断事件について「すでにリストされている過激派職員の『その日』を点検する電電公社」という大見出しのもとに、あたかも上原成信、伊藤弘之の両氏が中核派に所属し、右事件の内部協力者であるかのような印象を与える記事を掲載しましたが、上原成信、伊藤弘之両氏につきましては、両氏が中核派であり、右事件の内部協力者であるとする、さしたる根拠もないのに、かような記事を掲載しましたので、同記事中両氏にかかわる部分を取り消します。
当社及び当社週刊新潮前編集発行人野平健一が、右のような趣旨の記事を「週刊新潮」に掲載頒布して、伊藤弘之、上原成信両氏に対する世人の認識を誤らせ、かつ、その名誉、信用を毀損し、また、読者各位に対しましても多大の御迷惑をおかけしましたこと誠に申し訳ありません。
よつて、右のとおり謝罪いたします。
昭和 年 月 日
株式会社 新潮社
週刊新潮編集前発行人 野平健一
上原成信殿
伊藤弘之殿